July 07, 2021

耳鳴りに関するQ&A〜専門家に対処法を聞いてみた!

耳鳴りに関するQ&A〜専門家に対処法を聞いてみた!

〜耳鳴りの基礎知識と、適切な対処方法について〜

こんにちは!

連日の梅雨空ですが、お元気ですか。

今回は、耳鳴りの基礎知識と、その対処方法についてです。

この度の新型コロナウィルスによるパンデミックの間、専門家は治療に関してどのような試みを行なっているのか、耳鳴りの基礎知識と合わせて伺いました。

耳鳴りの専門家、ベン・トンプソン博士は、EarPeaceのチームにとって、古くからの友人でもあります。

博士は、今回のパンデミックの間、在宅の患者のために、テレケアと耳鳴り療法を組み合わせた新たなアプローチを開始しました。

CDC(The U.S. Centers for Disease Control )の調査によると、米国の成人の15%が、なんらかの耳鳴りの症状を経験したことがあるそうです。そこで、博士に連絡を取って、在宅であっても、耳鳴りの症状を私たち自身で適切に管理する方法があるのかどうか、教えてもらいました。

ベン・トンプソン博士〜耳鳴りの専門家。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)での研修を経て、カリフォルニア聴覚学アカデミー元理事。

 

Q.耳鳴りとは、なんですか?

A.耳鳴りとは、実際には発していない幻の音を知覚することす。コンサートが終わった後に、ハイピッチの音が聞こえたり、静かな場所であるのに音が鳴り続けること、夜寝ようとする時に音が聞こえるのも、すべて耳鳴りです。

音の聞こえ方には個人差もあり、ハイピッチな音に聞こえる人もいれば、高圧線のブーンというような音に聞こえる人もいます。特定の音の聞こえ方と原因との関連性は、突き止められていません。

Q.なぜ耳鳴りになるのでしょうか?

A.最も一般的な原因は、鼓膜のずっと後ろにある聴覚器官、蝸牛(かぎゅう:下図参照)の損傷です。大きな騒音にさらされることが、耳鳴りを発症する理由です。コンサートに行くこと、電動工具を使用すること、他には、兵役などによって発症する可能性もあります。

出典:ウィキメディア・コモンズ/Anatomy of the Human Ear.svg

蝸牛の機能は、大きな騒音にさらされた場合に、急速に低下する可能性があります。また、耳鳴りは、老化の自然な過程として発症することもあり、加齢に伴う難聴の中での、最もよくある症状の一つです。

そして、耳鳴りは、耳からきていると思われがちなのですが、実際には聴覚脳から発生します。聴覚神経、鼓膜、聴覚器官といった聴覚システムは、聴覚脳に属しています。耳鳴りの基本的な神経科学については、こちらの動画をご覧ください。(英語)

 

 

Q.耳鳴りを防ぐことはできますか?

A. 耳鳴りを防ぐ最善の方法とは、聴覚システムを痛めないよう、損傷を制限することです。EarPeaceなどの聴覚保護具を使えば、有害な音量を下げることができます。バイクの運転、建設現場での作業、音楽の生演奏、射撃などの大音量に触れる趣味や仕事をしている場合、聴覚保護は特に重要です。

また、騒音にさらされることだけでなく、精神的な負担によっても耳鳴りが悪化することがあります。不安やストレスが長引くと、症状が悪化することが知られています。睡眠不足によっても悪化する可能性があり、耳だけでなく、心身全体の健康状態に気を配る必要があるのです。

EarPeace 音楽用

 

Q. 耳鳴りの症状に対する治療方法はありますか?

現在のところ、投薬にせよ、外科的な手法にせよ、これといった耳鳴りの治療法というものはありません。何十年にも渡って、耳鳴りの複雑な神経学的メカニズムが研究されてきましたが、未だに治療方法は見つかっていません。

一般的に行われているのは、聴覚訓練と、心理学とを組み合わせる方法です。耳鳴りによる反応を調整することで、知覚を軽減させることが目的ですが、この治療には、6ヶ月以上の継続的な訓練が必要となります。

今最も有望な研究としては、蝸牛の細胞を再生させることによって、内耳の高周波細胞の機能を回復させようという試みがあります。これが成功すると、細胞レベルで、難聴と耳鳴りを軽減する方法が生み出されるかもしれません。また、耳鳴りを軽減するためのバイモーダル神経刺激も、研究されています。

耳鳴りを減らすには、まず中枢神経を落ち着かせることが大切です。聴覚脳は、中枢神経系から情報を受け取るからです。この時に、神経系が耳鳴りを脅威として認識した場合には、耳鳴りの知覚が高められます。これは身体の自然な反応として起こりますが、これがまた不安やストレスに繋がって、辛いループを繰り返してしまうのです。

耳鳴りの症状に対しては、聴覚学、心理学、それとリラクゼーションの三つの柱に焦点を当てていきます。適切な方法が取られれば、耳鳴りの知覚を減らすことができるでしょう。

他に需要なこととして、ストレスと不安の管理が挙げられます。

中枢神経を落ち着かせるには、心身全体の健康を維持することも重要なのです。

Q.耳鳴りの健康への影響とは、どのようなものでしょうか?

A.耳鳴りは、様々な医療分野の多くの医師たちに、あまりよく理解されていないという事実があります。医師に相談した場合、残念なことに、できることは何もないと告げられてしまう可能性があります。このような否定的なカウンセリングは、症状の悪化や、恐怖や絶望につながることがあります。

耳鳴りは、不眠症、不安神経症、ストレスとの関連性があり、頭の中でほぼ一日中大きな音が聞こえているとなると、集中して落ち着くことができません。これが続けば、鬱病を発症することもあります。

耳の中に鳴り続ける音を消す薬というのは、今のところないのですが、できることはあります。先ほどもお伝えしたように、聴覚学と心理学、そして心身全体の健康状態に焦点を当てることです。

耳鳴りは、耳の状態だけでなく、その人の全体的な健康をも視野に入れ、対処していくことが望ましいのです。

 

耳鳴りの専門家であるトンプソン博士は、マインドフルネス、音楽、心理学に関心があります。毎回4時間も車を走らせて会いに来る患者を支え続けていましたが、パンデミックが起きてから、テレケアと耳鳴りの治療を組み合わせる必要性、そして可能性に気づきました。その結果、2020年にPure Tinnitusを設立、遠隔医療をとおして、個人並びにグループへの耳鳴りの緩和療法を提供しています。

 

 

今回このように、耳鳴りに対しては、精神的な面でのケアも大切であることがわかりました。

耳だけでなく、心身全体を整えてゆき、少しでも楽に過ごせるようになることを願います。

それではまた! 

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