February 20, 2021

路上のイカになるな!
若きバイク乗りたちに捧ぐ

路上のイカになるな!<br>若きバイク乗りたちに捧ぐ

 

英語でイカのことを「Squid」と言います。最近、英語のスラングでよく使われるのが、Dont’t be a squid. イカになるな、という言い回し。

イカはネガティブに使われており、「社会的なルールが守れない」「無知でエゴむき出し」「イキる」「古き良き時代なら許されたが、今は許されないバカなふるまいをするさま」などを意味します。

出どころは諸説あります。

アメリカ海軍の水兵は陸軍や空軍の兵隊から「イカ野郎たち」と呼ばれており、彼らが南カルフォルニアでの休暇中にバイクをクラッシュさせまくっていたから、という説。

"Squirrelly kid"(リスのように落ち着きのない子ども)という言葉が短縮された、という説。

他にもいろいろありますが決定打はありません。

イカになるな、という言葉は、

「バカなマネをするな」

「まともな大人としてふるまえ」

という意味で使われています。

バイクデビューやツーリングデビューしたばかりのライダーは、すべてとは言いませんが、たいてい「イカの心」を持っています。

バイクに乗ってはじめて知る自由は、麻薬のような快感があります。

手に入ればかりの愛車を見せびらかしたくなるし、制限を超えてスピードをあげたくなります。

強気になってみたり、蛇行してみたり、ウォーと叫びながらウィリーのひとつもしてみたくなります。

自然な感情の発露です。バイクに乗れば、誰でも魔法にかかります。

「イカ」は性別も年齢もさまざまですが、傾向として「路上のイカたち」に若いオスが多いのは否めません。

その結果、過信やスピードの出しすぎで事故を起こし、致命傷を負い、最悪のケースになるのも、この「イカ野郎たち」が多いのです。


警視庁によると、令和元年の東京都内の二輪車運転中の死亡事故者数は28名。

年齢別で見てみると、24歳までの若年層と40代が突出しています。

令和元年、東京都内の年齢層別二輪車死亡事故

令和元年、東京都内の年齢層別二輪車死亡事故。警視庁HPより引用、転載

今回は「路上のイカ」からの卒業を目指し、あらためて安全対策に思いを巡らせてみましょう。

目次

1. リスクと責任を意識する

2. All The Gear, All The Time. いつもどこでもフル装備

3. 自分に適したマシンを選ぶ

4. 本物のライダーは学びつづける

1. リスクと責任を意識する

バイクの免許をとる際にインストラクターが最初に教えることは、リスクと責任を確認すること。

バイクはクルマに比べて事故の危険度・死亡率は高くなっています。

バイクとクルマを致死率で比較してみましょう。

(致死率=死者数÷死傷者数×100)

 

死亡者数

死傷者数

致死率

自動車

1,197人

338,333人

0.35%

二輪車

401人

28,103人

1.43%

 

警察庁交通局:平成30年中の交通事故の発生状況

つまりバイク運転中の致死率は、クルマ運転中の致死率に比べて約四倍!

バイクに乗る以上、社会やコミュニティ対して責任を負っていることも自覚しなればいけません。

具体的に責任とは何でしょうか。

事故が起これば、そこに居合わせた人は助けにかけよります。けが人を助けるのに必死でしょう。救急車を呼んでくれる人がいます。病院についていく人もいます。入院となれば、家族や友人や近しい人たちが、世話をしてくれることになります。

半身不随になって仕事ができなくなれば、金銭的にも物理的にもひとりでは生きていけなくなることも考えられます。

誰があなたを助けてくれるでしょうか。そのひとの顔を思い浮かべてみてください。

最悪の事態が起こった場合、今まで生きてきてあなたにかかわったひとすべてが、嘆き悲しむことになります。死人となったあたなの口では、ありがとうも言えません。

大げさに聞こえるかもしれませんが、バイクに乗る際の責任とは、そういうことです。

そのひとびとに金銭的、心理的な責任を負っていることを自覚しましょう。

毎年日本では400人以上の人がバイクで亡くなります。

まさか自分がその死者数にカウントされることになるとは、誰も考えもしません。

2. All The Gear, All The Time. いつもどこでもフル装備

警視庁が令和2年に発表した、二輪車の死亡事故の原因となった致命傷部位のグラフをご覧ください。

左は東京都内の死亡事故原因。右は、同じく都内の過去5年間の平均をとったもの。

「二輪車の交通死亡事故統計 令和元年中」より

(警視庁発表、「二輪車の交通死亡事故統計 令和元年中」より転載)

令和元年中に発生した二輪車乗車中の死者のうち、約40パーセントで事故時にヘルメットが脱落していました」と警視庁は報告しています(上記統計参照)。

ヘルメットをかぶっても、あごひもをしっかり止めていなければ意味がありません。

頭部の次に死亡原因となっているのが胸部、腹部の損傷。つまりプロテクターもマスト装備。

英語圏のバイク乗りは、こんな言葉を合言葉にしています。

All the Gear, All the time. 直訳すれば、どんなときでもフル装備。

頭文字を略して、ATGATT。

日本語では「いつでもどこでもフル装備」というモットーを私たちEarPeaceは提唱します。

欧米のライダーのバイクやライダースジャケットの背中に、「ATGATT」の文字を見ることがあります。これは自分への戒めであり、バイクを愛するすべての仲間たちへのメッセージです。

悪いことは自分には起こらない、と私たちは考えがちです。

ギアをつけずに乗ったり、同乗者にギアをつけずに乗せるることは、バイクを乗ることの危険性を理解していない「イカ」のやること。

近くのコンビニや仕事場など、なじみの場所にヘルメットをかぶり、フル装備でふらっとあらわれると、かならず聞かれる質問がありますよね。

「その格好で暑くない?」

そんなとき、あなたはどんなふうに答えますか。

私は最近、こう答えています。

「時速60キロで、素っ裸でアスファルトを滑るよりは暑くないよ」

ヘルメットはかぶっていたものの、Tシャツ短パンでバイクを運転中に接触事故を起こし、アスファルトの上を数百メートルすべっていった友達がいます。

命に別状はなかったものの、傷が治るまでの三週間、彼は病院のベッドでうつぶせのまま、じっとしていなければなりませんでした。

「生きている方が辛い」状態とはまさにこのこと。

 

3. 自分に適したマシンを選ぶ

「初めてのバイク選び」は、おそらくGoogleでもっともよく検索されるバイク関連のワードの一つでしょう。

何が一番いいバイクなのでしょうか。考えられる答えは無数にありますが、とてもシンプルで本当の答えが一つだけあります。それは・・・。

一番いいバイクとは、自分にとって一番いいバイクのこと。

たとえば、憧れのSUZUKI GSX-R600が欲しいなあ、と考えたとします。

最近の傾向として、誰もがまずはGoogleで検索し、Facebookの愛好者グループやネットのフォーラムなどにアクセスします。

そこで、このバイクが欲しいんだけど、初めての僕でも大丈夫ですか?と聞いたとします。

すると、多くのユーザーがこう答えました。

「慣れの問題だよ」「最高のバイク。いずれ一緒に走ろう」「最初は大変だけど、気楽に構えて」などなど。

はばかりながら申し上げます。こういう人たちも、はっきり言って「イカ野郎」です(本当のことを言って、ごめんなさい)。

なかには本当のことの言う人もいました。こんな風に。

「初心者に高性能のスポーツバイクは最悪の選択。理由はたくさんあるけど、初心者には理解できないかも。あきらめましょう」

ムッとするけど、この答えがベストアンサーだったことに気づくのは、お金をためて、バイクを買って、乗ってからの話。

Google検索で「初めてのバイク選び・後悔」というワードも大量にヒットすることをつけ加えておきます。

では、どうするか。

最初のバイクは、自分がイメージするライダーになるためのファーストステップ。最初から卒業するつもりで選ぶのです。

カッコはとりあえず置いておいて、オートマ・スクーターから入る選択もあります。安定した乗り心地は代えがたいものがあり、400CCのスクーターは疾走感も抜群です。

小型、シンプル、軽量、安くて修理も簡単なバイクを買うのが、デビューとしてはおすすめ、という人もいます。

ひとの体型も物を言います。(相対的に)背が高くて腕が長い人に合ったバイクがあります。

逆に背が低くて腕の短い人に合ったバイクもあります。

高速道路で乗るほどスピードが出るバイクである必要はありません。

そして何より大事なことは、ファーストライドの時から自分のバイクを大事に扱い、愛していくこと。するとバイクもあなたに心を開いていきます。

何か月も乗っているうちに、次にどんなバイクが欲しいのか分かるようになります。

スポーティーなものがいいのか。スピードより風景との対話がしたいのか。仲間とのツーリングがいいのか。

自分の望むものに合わせたバイク選びをしながら、自分も進化しつづけていきます。

固定観念にとらわれないこと。

自由で、リラックスできて、自分が一番自分らしくあれるバイクを選び続けてください。

4. 本物のライダーは学びつづける

イカの特徴は、何でも知っているということです。

たいてい彼らは独学か仲間から学び、驚くほどの能力と技術を持ちあわせています。

高速道路や山のS字カーブを、膝から火花を散らしながら疾走していく。

原動力はリスクの高いことに挑戦しようとする気持ち。

その気持ちはどこから来るのでしょうか。

人の注目を集めたいから?

グループ内で最速でいたいから、一番クレイジーでいたいから?

その結果は?

救急車とクレーン車の緊急出動です。

若者ではない「イカ野郎たち」の多くは、若者時代、必ずしも「イカ野郎」ではなかったかもしれません。

経験を積んで自信がつくと、つい自分を抜きんでた存在だと勘違いします。

バイクに乗りたいと思った日のことを、もう一度、思い出してください。

バイクは自分を自由にする最強の味方だったはず。

バイクは自分をカッコよくするための最強の味方だったはず。

バイクは世界の果てまで疾走するための最強の味方だったはず。

バイクは人生というロングジャーニーに伴走してくれる最強の味方だったはずです。

つまりバイク=自分の旅。

イカになってしまえば、旅はそこで終わり。成長もなく、未来もなくなります。

路上のイカにならない方法はとてもシンプル。

安全講習を受講して新しい技術を学び続けること、

もともと持っている技術を改善すること、

バイクの構造の知識を深めること、

そしてバイクとともに人生を歩み、常に学ぶことがあるという態度を保つこと。

誰からも憧れられるライダーは、人間的もカッコいいですよね。

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