〜アメリカ、パンデミックの苦境の中で生まれた強い絆とライブ業界の未来へのビジョン!
本日もおつかれさまです。
今回は、この苦境を皆で乗り越えようとするアメリカのライブ業界の試みと、新たなビジョンをご紹介します。
パンデミックによって、数多くのライブハウスが閉鎖に追い込まれることになりました。ミュージシャンにとっても活動が困難な状況にあって、音楽ファンとして、一体どのような貢献ができるのでしょうか。
アメリカでは、苦境を乗り越えるため、2020年3月に全米50州のライブ会場やプロモーターによる業界団体、NIVA(National Independent Venue Association)が立ち上げられました。Save Our Stagesキャンペーンを展開し、音楽の未来を考えつつ、インディーズライブハウスに必要な支援を行うことを目指しています。
この度、EarPeaceでは、Marauder(マローダー)のマネージングパートナー並びに共同設立者であるとともに、NIVAのエグゼクティブディレクターで共同設立者でもあるムース氏へのインタビューを行いました。
NIVAについて、パンデミックが音楽に与える影響や、地元のインディーズライブハウスを支援するためにファンができる行動について語っていただきました。
ムース師
EarPeace:NIVAは、パンデミックから生まれましたが、まさに完璧なタイミングだったと思います。そのきっかけとは何だったのでしょうか?また、どのような経緯を辿りましたか?
ムース氏:私の会社Marauderは、アメリカでIndependent Venue Weekを運営しています。そこでの活動を通じて、全米のインディーズ系会場とプロモーターのネットワークを構築してきたので、新たな組織を作る下地はすでにありました。
きっかけは、2020年2月末にフィラデルフィアのWorld Cafe Liveから、ハル・リアルとケリー・パークがニューヨークにやってきて、Marauderで私と一緒にIndependent Venue Weekを運営しているセシリー・ニールセンと同席した時でした。
そこで、インディーズ系の会場をまとめる組織を新たに立ち上げることについて、実に長い間議論しました。既存のIndependent Venue Weekと足を引っ張り合わないためにはどうしたらよいかなど、本当に素晴らしい会話でした。でも、今はみんな忙しすぎるから夏の終わりに再開しようと。
そうしたらなんと、3週間後に...。
EarPeace:パンデミック発生!
ムース氏:そうなんです!South by Southwestがキャンセルされたとき、Marauderのセシリーとともに、Independent Venue Weekのコミュニティを活性化しようと、Zoomで集会を開きました。
その後、年間を通じて毎週行われるようになり、ワシントンに働きかけるため、会場とプロモーターを代表する新組織を作るというアイデアは、ここから生まれたのです。
メンバーは3つの委員会に分かれ、次の1週間半で理事会、各州のメンバーが揃い、ロビイストが集まり、Save Our Stagesキャンペーンと規約ができあがりました。迅速な行動でした。
けれどもこのビジネスモデルは、政府が提唱するパンデミック対策の資金提供プログラムには組み込まれていませんでした。こうした企業や団体が一番最初に閉鎖され、最後に再開することになるであろうことはみな分かっていました。
4月と5月はまったく演奏が行われませんでした。当時、新聞に全面グラフで今後の予測チャートが掲載されていましたが、私たちの業界の再開は最後から二番目だったんです。
それに、このような資金調達プログラムは、3ヶ月の有給休暇のようなもの。とても必要経費をまかなうことはできませんし、家賃も住宅ローンも払えません。
そこで、「Save Our Stages Act」(現在は「Shuttered Venue Operators Grant」として知られている)という解決策を提案しました。これはコーニン氏、クロブカー氏、シューマー氏といった各上院議員の尽力を得て、超党派の支持を勝ち取ることができ、現在では160億ドルもの資金を調達できています。
EarPeace:本当にあっという間にできあがったことに驚きました。でも、当初は議会への働きかけがうまくいかなかったということですが...。.
ムース氏:そうですね...というより誰も成功しなかったんです。
最初の資金調達プログラムには参加しませんでした。CARES法(コロナウイルス支援・救済・経済安全保障)私たちの事業分野には適していなかったのです。
このようなことが起こったとき、彼らのスピードに合わせるとなると、ロビイストを雇って...色々と面倒なことがあります。今では多くの人が忘れようとしていますが、政界は必ずしも友好的ではありませんでした。
EarPeace:ええ、ちょっとストレスがありましたね。
ムース氏:その後、12月20日にCARES法2(2番目の救済パッケージ)が成立、大統領の署名は12月27日でした。ですから、パンデミックが始まってから12月27日までは、何が起こるかまったくわからない状態だったんです。
私たちが最初に行った調査では、もし連邦政府から有意義な資金援助が受けられなければ、インディーズ系会場やプロモーターの90%が、6カ月以内に永久に閉鎖されるという結果が出ていました。
しかし、会場やフェスティバルの撤退が見られなかったのは、「Save Our Stages Act」が存在し、誰もが資金援助の実現を信じていたからです。
みんなが私たちのために戦ってくれました。何千人ものアーティストが協力してくれましたし、資金調達プログラムに参加できなかった人たちを支援するための募金活動も何度か行いました。
結果として、NIVAの緊急支援基金を通じて300万ドル以上を分配しました。法案が立法化されるまでの歩みは遅く、非常にストレスフルでしたが、最終的には可決されました。
EarPeace:NIVAが掲げる価値観のひとつに、公平性とアドボカシー(擁護)、特に社会的地位の低い人々、オーナーやプロモーター並びにスタッフへのコミットメントがありますが、それは実際にはどのようなものですか?
ムース氏:インクルーシビティ(包摂性)、ダイバーシティ、平等性、アクセシビリティをサポートする環境を作るという考え方で、つまりは世界をより良い場所にすることにつながります。
当初から、このプログラムにおいて多くの人々を歓迎するということは欠かせませんでした。パンデミックによる資金提供プログラムの外に目を向ければ、そこにチャンスがあることがわかると思います。
他の多くの産業と同様、歴史的に排除されてきたコミュニティは、ライブ空間でも十分に存在感を示していません。オーナーやプロモーターにとっても、これまでマーケティングを行っていなかったコミュニティから、アーティストやファンを獲得することが必要です。
NIVAの立ち上げに際しての責任のひとつは、大企業、中小企業、成功者だけでなく駆け出しの人たち、それもお笑いから音楽、舞台芸術まであらゆるコミュニティのメンバーを積極的に迎え入れるよう最善を尽くすことでした。
そこで、法案化されたこのプログラムを少しでも多くの人たちに知ってもらおうと、人々に直接電話をかけて、Shuttered Venue Operators Grantというプログラムについて知っていますか?」と呼びかけたのです。
結果、通常の方法では届かなかった人たちにも知ってもらうことができました。今後も、これまで十分なサービスを受けられなかった人たちを支援することができればと願っています。
EarPeace:音楽をはじめ芸術に関わる人たちはみな、世界をよりよいものにしたいと望んでいると思うのですが、それでも次に何が起こるかは分からないのですよね。
特に音楽業界では、こんなことも可能なのだと知ってもらい、各スペースと人とをつなげることが大きなハードルになっていると感じています。
ムース氏:それについては、NIVA(業界団体)とNIVF(TheNational Independent Venue Foundation、501c3団体)の間で、支援のための多様なプログラムを構築しようと積極的に取り組んでいます。
まずは労働力の開発プログラム、それからあらゆる年齢層を対象とする教育プログラムも構築中です。
既存のモデルをベースとしつつも、複製や拡張できるものにして、意欲はあってもそのための時間やリソースを持たない他のコミュニティに提供できる立場ですから。
ひとつに代表者不足は、キャリアのあらゆる段階で解決すべき問題です。若い人たちにキャリアの選択肢のひとつとして考えてもらう必要がありますし、現職の人たちにとっては、成長や発展への道筋を見出せる環境であるべきです。
また、自分の会社を持ちたいと考えている人に対しては、通常一般社会の人たちが利用するリソースにアクセスできるようにする必要があります。変化を望むなら、障壁を取り除くだけでなく、より門戸を開かなければなりません。
EarPeace:本当にそうですね。ここで、NIVA(事業者団体)とNIVF(501c3団体〜法律第501条C項3号の規定による非営利団体)の違いについて、素人にも分かるよう説明してもらえますか?
ムース氏:NIVAは業界団体として設立され、会員のためにロビー活動を行うことを目的としています。確かに業界団体には、ネットワークを構築したり、実際に会ったり、スポンサー活動や会議を通じて割引を受けられたりと、様々な利点があります。
一方、後者はロビー活動以外の活動に重点を置きながら、同様のミッションを支援しています。 特に「NIVA緊急支援基金」と呼ばれる活動に力を入れています。
その他、教育やコミュニティーのプログラム、従業員のトレーニングやサポート、経済開発イニシアティブ、特に機会損失が顕著な地域や十分なサービスを享受できていないコミュニティーでも活動しています。
EarPeace:そしてパンデミック終了後、決して元に戻ることはなくともより良い未来へ向かうことを楽観的に望んでいます。NIVAの役割は、今後どのように変化していくと思いますか?
ムース氏:苦境の共有によって、以前は存在しなかったもの〜強い絆で結ばれたコミュニティを手にしました。 このような人間関係、友情、コミュニケーションは、以前は存在しなかったんです。
発展させたいと願っていますし、来年7月に計画されているカンファレンスがあります。「Save Our Stages Act」の後に開発されたアドボカシー・プラットフォームに取り組んでいるところです。また、様々な会員特典を構築中です。
そして、会場やプロモーターではないけれども、コミュニティの一員でありたいという人たちのため、アフィリエイトメンバーへも開放しています。このような仕組みが整ったことで、さらに高い目標を持つことができるようになりました。
また、ボランティア部隊として、数百人のボランティア一人一人が1つの目的のためにノンストップで取り組んできましたが、今はスタッフを抱えて在り方自体も変遷しています。実に色々なことが起きているんです。
EarPeace:最後の質問となりますが、一般のファンは、団体のミッションや地元のインディーズ系ライブハウス(記事)をサポートするために何ができるのでしょうか?
ムース氏:やはり一番は、チケットを購入することに尽きます。チケットを買って、そのお金がどこに行くのかを知ること。何かを購入する際には、お金がどこに使われているのか、把握しておくべきだと思うんです。
みなさんが今住んでいる地域にも、地元に密着した個人経営のライブハウスがあって、素晴らしいプログラムを実施し、地域に貢献しながら経済活動を活発化させていると思います。
結局は私たち全員にとって良いことなのです。何より、チケットを購入することで、忘れられないステキな夜を過ごすことができます!
それから、EarPeaceの耳栓を購入するならば、実際に試してみる場所としてライブハウスは最適ですね。
また、EarPeaceのご厚意によって、私たちのウェブサイトで特別にカスタマイズされたNIVA耳栓を販売していることも伝えておきます。NIVFにアクセスすれば、そこからご購入いただくことも可能です。
EarPeace:シェアしてくれてありがとうございます!今日は色々とお話を伺えて最高でした。
ムース氏:こちらこそありがとうございます。
以上です。パンデミックをともに乗り越えることによって新たに生まれた強い絆。業界全体の新たな可能性を巡り、関わる人たち全員にとってより良い環境にしようとの情熱が素晴らしいですね!
それではまた!
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