by ヘイリー・アーノルド(Hailey Arnold)
ライディングに潜む聴力障害の危険性
バイクに乗る人なら誰でも、一度は(おそらく何度も)「バイクは危険だ」と忠告されたことがあるはずです。
私も親戚が集まるクリスマスの夕食会で、親戚一同から「女の子がバイクに乗るなんて危険すぎるから今すぐやめなさい」と説得されたことを覚えています。多くのライダーは「スリルが大好物だから!」「命なんて惜しくないさ!」なんて冗談で受け流すかもしれませんが(……えっ、私だけですか?安全を心配してくれる周囲に対して、強がりなライダーを演じてしまうのは私だけじゃないと信じたいです)。
ですが、本音を言えば私も自分の安全が心配です。だからこそフルフェイスのヘルメットをかぶり、プロテクター入りのライディングギアを身につけています。装備を固め、ライディングスクールや練習で技術を磨くことで、リスクを減らせると信じているからです。
バイクに乗り始めて以来、自分では責任感のあるライダーだと思っていました。しかし、ある「とてもリアルで、けれど無視されがちな危険」から自分を守ることを完全に怠っていたのです。
それが、「難聴(聴力障害)」のリスクです。
知っておくべき「音と耳」の現実
- 「有害な騒音(過度な大音量や、長時間続く騒音)に晒されると、内耳の中にある繊細な構造がダメージを受け、騒音性難聴(NIHL)を引き起こします。この繊細な構造は『有毛細胞』と呼ばれ、音のエネルギーを電気信号に変換して脳に伝える重要な役割を果たしています。一度破壊された有毛細胞は二度と再生しません。つまり、使い潰したらそれでおしまいなのです。」
- 「聴覚ダメージのリスクは『音の大きさ(dB)』と『晒される時間』の2つで決まります。120dBを超える一瞬の爆音(ドカンという衝撃音)でも耳は即座にダメージを受けますし、85dB程度の騒音でも長期間にわたって聞き続けると少しずつ聴力を蝕んでいきます。バ イクに乗った後、耳がキーンと鳴ったり、周囲の音がこもって聞こえたりするなら、それは適切な保護なしで『大きすぎる音』を『長すぎる時間』聞き続けてしまった証拠です。」
- 「音量が数デシベル上がるだけでも、耳への危険度は飛躍的に跳ね上がります。音の大きさが3dB上がるごとに、音響エネルギー(音圧)は『2倍』になり、安全に聴いていられる時間は『半分』に減ってしまいます。」
走行中の騒音を生み出す3つの要因
There are several sources of noise that may damage a motorcyclist’s hearing.
ライダーの耳を痛める主な騒音源には、以下の3つがあります。
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走行スピードに伴う「風切り音(ウインドノイズ)」 *風切り音は、バイクのエアロダイナミクス(カウルやスクリーン)、ライディングポジション、ヘルメットの空力性能によって変化します。
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バイクのエキゾーストノート(マフラー音)やエンジン音
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周囲の道路ノイズや交通の騒音

過去40年間にわたる複数の研究によると、一般的なスピードで走っているときに発生する「避けられない風切り音」だけでも、安全基準を大幅に超えていることが分かっています。ヘンリー・フォードの研究機関によると、時速15マイル(約24km/h)で風切り音は最大85dBに達し、時速60マイル(約96km/h)ではなんと120dBに達したと報告されています。他の研究でも、時速30マイル(約48km/h)で90dB、時速70マイル(約112km/h)で115dBという結果が出ており、横風や空気抵抗の悪さによってはさらに大きくなります。
労働安全衛生庁(OSHA)の基準によれば、このレベルの騒音に晒されて良い時間は「1日わずか15分間」です。……ちょっと待ってください、私の毎日の通勤時間だけでその安全基準をオーバーしてしまいます!
風切り音は、スクリーン(風防)やカウルの有無で増減します。スクリーンがないネイキッドバイクのライダーが最も激しい風圧と騒音を受け、大型スクリーンのあるツアラーに乗るライダーは、風圧とノイズの両方からある程度守られることになります。
神話検証:「爆音マフラーは命を救う(Loud Pipes Save Lives)」は本当か?
バイク界には昔から「爆音マフラーは周囲に存在を知らせて事故を防ぐ(Loud Pipes Save Lives)」という有名な言葉があります。ド派手な社外マフラーに交換するための格好の言い訳に聞こえますが、残念ながらこの説は研究者や科学者によって完全に否定されています。
ドップラー効果と現代の車の高い防音性能により、通常の走行状態では、車内にいるドライバーにバイクの排気音はほとんど届かないことが判明しています。
ルーマニアで行われた研究では、80〜110dBの排気音を持つ6台のバイクを使い、車内からどう聞こえるかを実験しました。自動車メディア『Autoweek』がまとめたその結果によると、「車の15メートル後ろを走行している場合、どのバイクの音も車内には聞こえない」「車の10メートル後ろであっても、最も爆音のマフラーですらほとんど聞こえない」という驚きの結果になりました。さらに驚くべきことに、車のすぐ横や4メートル前方を走っていても、バイクの音は明確には認識できませんでした。
この研究は「爆音マフラーがライダーの命を守る」という古い神話を完全に打ち砕きました。最高110dBという強烈な爆音は、周囲に存在をアピールするどころか、ライダー自身の耳に不可逆なダメージを与えている可能性の方が遥かに高いのです。
ヘルメットだけで「難聴」を防げるのか?
市場で最も静かと言われるプレミアムヘルメットなら、道路のノイズを和らげてくれますが、それも特定の条件下での限られた効果に過ぎません。
フルフェイスヘルメットが耳を守るためには、あごや首回りに密着し、ヘルメットの下から入ってくる風の巻き込みを抑える必要があります。空力性能に優れたシェル形状やベンチレーション設計は、風の乱気流を防ぎ、風切り音を減らしてくれます。逆に、ジェットヘルメット(オープンフェイス)が耳を難聴から守ってくれないのは言うまでもありません。

ドイツのヘルメットブランド「Schuberth(シューベルト)」は、市場で最も静かなヘルメットを作っていると自負しています。彼らは自社の風洞実験室で騒音テストを行い、最高峰モデル(C3 ProやC4 Pro)の内部騒音が82〜85dBを超えないよう設計している数少ないブランドです。しかし、その防音性能を手に入れるには高い費用(約650〜900ドル)がかかり、しかもシステムヘルメットであるため、万が一の転倒時の保護性能は通常のフルフェイスに比べるとやや劣ります。
「Shoei(ショウエイ)」も最新モデル「RF-1400(日本名:Z-8)」で静音性の向上に挑みました。チークパッドやネックロールを再設計して首回りの密着度を高め、シールドの端に「ボルテックスジェネレーター」と呼ばれる小さな突起を設けることで乱気流を抑える設計になっています。私個人の体験としても、RF-1400はこれまでに被ったヘルメットの中で最も静かでした。
しかし、どれほど素晴らしいヘルメットであっても、ヘルメット単体で十分な聴覚保護を行うことはできません。 私は初日からぴったりフィットする最高評価のヘルメットを被ってきましたが、もしヘルメットだけで耳を守れるなら、私が今この記事を書いているはずがないのです。
私が言いたいのはひとつだけ。「耳の保護は、ヘルメットと耳栓のダブル使いをしよう!」ということです。
私自身が体験した「忍び寄る聴力低下」の怖さ
かく言う私も、最初から耳のケアに熱心だったわけではありません。バイクに乗る時に耳栓を着け始めたのは、実はごく最近のことです。私は痛烈な経験を通じて、難聴の危険さを学ぶことになりました。
何年か前、愛車のヤマハ FZ-07(MT-07)にアクラポヴィッチのマフラーを取り付けた瞬間、その音に一目惚れしました。重低音が響く最高のサウンドで、とにかく音が大きかったのです。トンネルに入るたびにアクセルを吹かし、シフトダウンしてはアフターファイアの弾ける音を楽しんでいました。
ご存じの方も多いと思いますが、このバイクは風を防ぐスクリーンもカウルもないネイキッドスポーツです。週末になればワインディングを攻め、高速道路を爆走し、爆音を響かせていました。……その後の結末は想像がつきますよね?
認めざるを得ないのですが、あのバイクの「サウンド」に恋をしたことが、私の耳の健康がゆっくりと、しかし確実に崩壊していく始まりだったのだと思います。

バイクに乗る前の私の耳は「超クリア」でした。どんな微かな音もくっきりと聞こえ、自分の聴力が衰えるなんて考えたこともありませんでした。「若者は自分を無敵だと思い込む」と言いますが、まさにその慢心が耳の健康を害する結果となったのです。
振り返れば、難聴のサインははっきりと出ていました。ツーリングの後はいつも耳が詰まった感じがして、すべての音がこもって聞こえました。高速道路を走った後の風切り音だけで頭痛がすることもあれば、長距離走った後は何時間も耳鳴りが消えないこともありました。「そのうち元に戻るから大丈夫」と軽く考えていましたが、今思えば「そこそこの聴力」が私の新しい普通になってしまい、かつての「超クリアな耳」が戻ることは二度とありません。
難聴の怖さは、かなり深刻になるまで自分では気づかないことです。枕元のグラスから水が少しずつ蒸発していくように、聴力は時間をかけて静かに失われていくのです。
私にとって、父の経験が大きな教訓になっています。父は10代の頃から「バイク」と「音楽」という2つの情熱を注いできました。生涯ライダーである父は、私よりも数十年にわたるダメージを耳に蓄積させています。
最近、父はようやく補聴器を作ることを決意しましたが、自分の聴力がどれほど悪化していたかを知り、ショックを受けて失望していました。ここ数年は耳鳴りにも悩まされています。父は決して弱音を吐かない人ですが、聴力の低下と耳鳴りが、大好きな音楽や高級オーディオを楽しむ邪魔をしているのは間違いありません。
私も父に似て、バイク、音楽、映画、そして心地よい会話が大好きです。だからこそ父の経験から学び、まだ手遅れにならないうちに自分の耳を守ることに決めたのです。
もちろん、私や父が「耳のためにバイクをやめる」なんて選択肢は万に一つもありません。私は頑固ですし、バイクを愛しすぎていますから!
ただ、自分の体をプロテクターやヘルメットで守るのと同じように、「耳もギア(装備)で守る」という選択をしたのです。具体的には、「音響フィルター付きの耳栓」をライディングギアに加えたのです。
耳栓をするもうひとつの重要な理由:脳の疲労と「反応速度」
「耳栓をすると周囲の音が聞こえなくなって危険だ」と言う人がいます。確かに周囲の音を聞くことは大切ですが、過剰な騒音自体がライダーの集中力を削ぐ危険な要因になることを知っておく必要があります。
脳機能に対する環境ノイズの影響を調べた研究によると、背景の騒音に晒されると脳の処理能力が奪われ、反応速度が遅くなることが分かっています。研究(Trimmel et al.)によれば、「60dBの背景ノイズが、視覚・空間的注意に対する脳の情報処理を乱す」とされています。
つまり、バイク走行中の風切り音やエンジン音は、知らず知らずのうちに脳へ過剰な負担をかけ、周囲の状況を判断して反応する力を鈍らせているのです。言うまでもなく、バイクにおいて「コンマ数秒の反応速度の差」は命に関わります。
EARPEACE で、安全にライディングを楽しもう
ライダーに必要なのは「安全に必要な音を聞き取りつつ、有害な大音量だけをカットできる保護ツール」です。救急車のサイレンや接近する車の音は、自分や周囲の安全のために聞こえなければなりません。バイクにおいて周囲の状況を把握することはすべてです。
EARPEACE Moto Pro は、有害なデシベルだけをフィルタリングし、必要な音は安全な音量でクリアに届けてくれます。
安全に必要な周囲の音やバイクの心地よいエキゾーストノートはそのままに、耳を守ることができる「まさに理想の解決策」です。フィルター付き耳栓はとてもシンプルなアイテムですが、だからこそ完璧な答えになります。
今では耳栓も、私のライディングギア(ヘルメットやグローブ)の欠かせない一品です。これからは耳を犠牲にすることなく、何年先も大好きなバイクライフを全力で楽しんでいきたいと思います。

[著者プロフィール] ヘイリー・アーノルド(Hailey Arnold) ワシントン州シアトル在住。バイクディーラーでの勤務経験を持ち、初心者ライダーへの情報発信やサポートを情熱的に行っている。愛車のDucati Streetfighterで太平洋西北部の美しい景色を巡ること、友人との時間、そして日常の小さな幸せを味わうことが大好き。 Instagram: @coldheartedsnek





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