生活の様々な場面に影響を与える耳鳴り〜正しい知識を備え、上手に付き合っていきましょう!
目次
1.はじめに
2.耳鳴りとは何か?
3.耳鳴りの原因
4.耳鳴りの種類
5.いつ診察を受けたらよいか?
6.耳鳴りの対処方法
7.まとめ
【1.はじめに】
米国国立聴覚障害研究所(National Institute on Deafness and Other Communication Disorders)によると、2008年には、アメリカの人口の10%にあたる約2500万人が、5分以上続く耳鳴りなどの聴覚障害を持つと診断されました。2014年になると15%近くにまで急増しました。
現在、生活環境は益々ストレスフルになり、心身ともに多大な負担がかかっているのが実情です。
辛い慢性的な耳鳴りを抱えた場合、生活のあらゆる側面に影響を及ぼす可能性があります。
今のところ治療法は確立されていませんが、ライフスタイルの改善をはじめ、耳鳴りと上手に付き合っていくことは可能ですので、本日はその方法などもご紹介したいと思います。
【2. 耳鳴りとは何か?】
耳鳴りとは、内耳の蝸牛(かぎゅう)、聴覚神経、脳の一部(特に認知、記憶、感覚を司る部位の神経ネットワーク)に影響を及ぼす感音性疾患のことをいいます。
たいてい不快音が5分以上続き、ゴーッ、ヒューヒュー、ブーンといった音が聞こえたりします。音の種類や大きさの程度は様々です。
出典:Anatomy of the Human Ear.svg
【3.耳鳴りの原因】
耳鳴りの原因は多岐に渡ります。騒音に長く晒されることが大きな要因とされますが、他にも様々な原因があります。
症状は軽度であっても、神経的な問題や身体の基礎疾患から生じている可能性もあり、放置すればいずれは難聴になったり、入院が必要となるケースもあります。
以下のような疾患が耳鳴りの原因とされています。
・耳や副鼻腔の感染症が繰り返されること
・加齢による難聴
・心臓病の既往症
・線維筋痛症
・うつ病や不安障害
・高血圧、高コレステロール
・ホルモンの変化(更年期障害と妊娠の両方に関連する)
・顎のずれ、特に顎関節障害
・ライム病
・メニエール病
・甲状腺の異常
・外傷性脳損傷
その他、耳垢の蓄積、ストレス、アルコール、ニコチン、カフェインの過剰摂取、不眠症など睡眠障害も原因となることが知られています。
200種類以上の薬(抗生物質、利尿剤、抗うつ剤など)も耳鳴りの原因とされていますが、市販薬、処方薬ともに主な原因となる決定的な証拠は見つかっていません。
【4.耳鳴りの種類】
耳鳴りには、「自覚的耳鳴り」「他覚的耳鳴り」「神経性耳鳴り」「体性耳鳴り」の4つのタイプがあります。
最も多いのが「自覚的(主観的)耳鳴り」で、突然現れたり消えたりします。たいてい患者本人しか聞き取ることができず、その多くが正常な聴力の最大閾値である85dB以上の騒音に長時間さらされた結果として生じます。1年以内に収まる場合もありますが、重症になると生涯続くこともあります。
「他覚的(客観的)耳鳴り」は全体の5%以下と稀でより治療しやすく、自覚的耳鳴りとちがって心拍に同期して聞こえるのが特徴です。内耳の筋肉の異常収縮や、血管の変形が原因であることが多く、いずれも外科的処置や、場合によってはインプラントでも治療可能です。
「神経性耳鳴り」は、内耳と脳の聴覚機能の連携に関する障害によって引き起こされます。一般的には、音響神経腫、多発性硬化症、頭部外傷、騒音への暴露、耳硬化症、髄膜炎、メニエール病などが挙げられます。
「体性耳鳴り」は、筋骨格系の症状です。首や顎の筋肉の収縮が原因で、自覚的耳鳴りと共通したピッチや大きさで生じます。顎関節症が主な原因ですが、最近の研究では、鍼治療や電気神経刺激によって、影響を最小限に抑えられることが証明されています。
その他、耳の血流の変化が心拍と同期することで発生する「拍動性耳鳴り」と、「低周波性耳鳴り」があります。ドローン音やハミング音のような音のする「低周波耳鳴り」では、測定が難しいく混乱を招きがちです。
【5.いつ診察を受けたらよいか】
耳鳴りは周期的に起こるものですが、突然何の前触れもなく生じることもあります。
いっとき騒音に晒されたり、季節の変わり目に時々起こることがあっても、毎回専門医の治療が必要なわけではありません。
環境が要因であればそれをなくすよう努め、耳栓を含む適切な保護具を使用することでリスクを減らすようにしましょう。
耳鳴りも慢性的になると日常生活に支障をきたす可能性があります。通常最初に診察するのは耳鼻咽喉科医ですが、さらに別の聴覚専門医を紹介されることもあります。
特に上気道炎や副鼻腔炎の後、1週間たっても耳鳴りの症状が消えない場合は、早急に受診しましょう。
耳鳴りに加え、めまいや立ちくらみ、顕著な難聴や急性不安などがある場合も、迷わずすぐに医師の診察を受けてください。専門治療が必要な神経的基礎疾患の症状である可能性があります。
【6.耳鳴りの対処方法】
耳鳴りの治療法は確立されていませんが、実験的な治療法(電気や神経刺激療法など)は、臨床薬剤試験と合わせて研究が進められています。
効果的に管理するには、環境要因を整え行動習慣を改めることで、生活への影響を最小限に抑えることが重要です。耳鼻咽喉科医や聴覚専門医は、以下のような治療方針を提案することがあります。
補聴器:デジタル式、アナログ式ともに、最近のものは煩わしさや不快感を伴うことなく装着できます。研究では、耳鳴りの不快感を和らげる成功率は85%まで上がっているとのことです。補聴器は、外部の音量をコントロールするのに有効ですが、耳鳴りが内耳の障害によって引き起こされている場合、補聴器の有効性を判断できるのは、耳鼻科医または聴覚専門医のみです。
人工内耳:重度の難聴の結果、耳鳴りと診断された場合に人工内耳が処方されることがあります。インプラントは、電気信号によって聴覚神経を刺激することで耳鳴りの影響を覆いつつ、神経回路の変化を促します。
サウンドジェネレーター:比較的安価な方法で外部の騒音を遮断することができるため、耳鳴りの管理に有効と感じる人たちもいます。(サンパウロ大学が行った最近の研究でも結果が出ています。)サウンドジェネレーターには、デスクトップ、モバイル、ウェアラブルなど様々なタイプがあり、ほとんど聞こえないピンクノイズから心地よい自然音や音楽まで、幅広い音源が用意されています。
カウンセリング:耳鳴りの副作用として、精神的苦痛を感じている場合、耳鳴りの発生メカニズムや日常生活に及ぼす影響を理解するためのカウンセリング・プログラムは有効です。特に認知行動療法では、リラクゼーションや生活の質を向上させるため、対処のメカニズムを理解できるように導きます。
さらに食事と運動は、心身のバランスのために重要です。もしまだアルコールやニコチン、カフェインの摂取を控えていないなら、今から始めてみてはいかがでしょうか。サプリメント(亜鉛、マグネシウム、B12、イチョウ葉など)には、ストレスを軽減する効果があることが分かっていますが、耳鳴りへの効果については臨床実験では証明されていません。
7.まとめ
耳鳴りに関する大きな誤解の1つとして、耳鳴りは難聴を引き起こすというものがあります。難聴と耳鳴りの関連性は十分に立証されてはいますが、耳鳴りは症状のひとつであり、必ずしも聴力の低下につながるわけではありません。
辛い耳鳴りは生活に支障をきたすことがありますが、どれほど悩まされようとも対処可能な症状でもあります。正しく知って上手に適応していくことで、より快適に過ごせるようになるでしょう。
以上です。
予防は耳の健康への一番の近道と言えますが、耳鳴りの症状が出て困難を感じるときには、早めに医師の診察を受けてください。
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