November 20, 2021

宇宙のすべては音でできている〜聴覚の神秘に触れて音を楽しもう!

宇宙のすべては音でできている〜聴覚の神秘に触れて音を楽しもう!

聴覚の驚くべき能力〜私たちはみな音を通してつながっています!

 

こんにちは。本日もおつかれさまです。

EarPeaceの使命は、世界中の人たちの聴覚を守ることと考えています。

聴覚を健康に保つことがなぜ重要なのかを知ってもらい、海へ行く時に必ず日焼け止めを携帯するように、優れた耳栓が生活に必要なツールになることを願っています。

本日は、私たちはなぜ音を聞くことができるのか、聴覚についての神秘的な事実を伝えたいと思います。

 

数年前に出会った、EarPeaceの重要なアドバイザーで友人でもあるクリス・シュバイツァーが教えてくれたことがあります。

最近、ダニエル・J・レヴィティンの素晴らしい本『This Is Your Brain on Music』(邦題『新版 音楽好きな脳 ~人はなぜ音楽に夢中になるのか』)を読んで、聴覚がいかに宇宙的に重要かといった本を書きたいと伝えたところ、宇宙のすべてのものが音でできているということについて、快くボランティアで説明してくれたのです。

どうもありがとうクリス!こちらが、今年1月に和訳が出版されたその本です。

『新版 音楽好きな脳 ~人はなぜ音楽に夢中になるのか』

音が耳に入ってきた時に、脳でどのように処理されるのかなどが綴られています。

そうです!音とは、人間にとって実に根源的な感覚なのです。

音以上に、人と人、人と宇宙をつなぐものはありません。聴覚は、私たちを自分自身に引き戻してくれるユニークな存在であり、この宇宙のすべてを構成する振動に最も直接的につながることのできる奇跡的な感覚です。ですから、聴覚を維持していくことはやはりとても大切です。


【鼓膜は優れた音の探知機】

ジェット機の音を聞いて、空を見上げたことは何度もあると思います。

すぐに飛行機を見つけ、おそらく12キロくらい離れていて南東に向かっているな....などと識別したことがあるかもしれません。

不思議ではありませんか?ジェット機は、信じられないほどの高さにあって、わずかに見えるだけなのに、その振動は皮膚や耳の穴に沿って確実に伝わってくるのです。

ご存知のように、鼓膜が振動の探知機になっています。鼓膜は、顔の皮膚の延長線上にあるよく伸びた膜状の物体で、体内の小さな骨にしっかりと取り付けられています。誰もがこうして、両耳に驚くべき振動検知器を備えています。

円の中の小さな白い点は、南フランスのジェット旅客機で、屋根からおよそ4マイルのところを飛んでいます...音を聞いてそう思いました。



【ジェット機の音が鼓膜に伝わるまで】

その昔、解剖学ではTympaniと呼ばれた鼓膜は、波打つ大気と一緒になってエネルギッシュに、ミクロレベルで揺れています。

地表から約4万フィートの高さにあるジェット機のエンジンからあらゆる方向に向かって一斉に吹き出される音の波紋は、巨大な連鎖を経て最終的に耳まで伝わります。

上下、前後左右とあらゆる方向に放たれた何兆もの空気分子が、広大な中継網の中でまるでドミノ倒しのようにぶつかり合います。この大気中の分子がぶつかり合う様子が、常日頃経験しているサウンドの源です。

空に響く轟音は、遥か彼方のジェット機の通過を知らせ、見上げる人の意識に、極めて繊細な波として伝わってくるのです。上空では耳をつんざくような轟音が、地上では体の表面にかすかな感触として、実際に触れ、耳だけでなく目や肌、髪など全身にナノレベルで到達します。

エンジン音が聞こえるのは、鼓膜を形成する外皮層から始まる聴覚システムが、水素分子の半分にも満たない小さな分子のタッチを捉えるからです。

その時もしジェット機の数メートル以内に近づいて、衝突し合う何十億もの分子の振動の海を通り抜けたとしたら、音響のパワーは100兆倍(140dB!)にもなって、聴覚はおそらく決定的なダメージを被ることでしょう。



ジェットエンジンの爆音による振動の連鎖現象は、1つの分子が1つの隣接した分子にぶつかることによって四方八方から順に届くため、雲間に見える光子(光の分子)よりも、到達までにはるかに長い時間がかかります。分かりやすい例としては、雷が光った後に遅れて聞こえる音などがありますよね。

とにかく、何十億もの空気分子が肌に触れ、鼓膜に軽く跳ね返ってくることで、音が聞こえます。

そのレベルは多岐に渡り、ごく繊細な音から、ライブで耐えられないと感じるような音まで、いずれにしても目に見えないどこかで局所的に始まった空気の動きが肌に伝わり、個人の身体をもって終着点を迎えます。

 

【普通の会話の場合】

では、普通の会話の場合はどうでしょうか。

会話が少し離れた場所で行われていても、マイクを通してでも、デジタル再パッケージ化されようと衛星放送であろうと、その他スピーカーにヘッドフォン、すべて振動が届いて肌に触れるという点では同じです。

誰かが皆が共有する空気の海に向かって話しかけ、それを聞くということは、振動の連鎖によって肌を撫でられるということになります。

たとえあまり好きでない人がテレビの中で話している時でも、もしそれを聞いたならば、触れられたことと同じなのです。不思議ですよね!

実際に、30〜40年前のAT&Tの電話のコマーシャルには、「手を伸ばして、誰かに触れよう」というキャッチーな歌詞がありました。(ただし、マーケティング担当者がこの歌詞は文字通りに正しいということを知っていたかは疑問です。)

聴覚とは驚くべき器官であり、内耳のわずか数十ミクロンの長さの細胞群が振動を捉え、ジェット機の音などのサウンドだけでなく、会話などの音声メッセージを私たちに伝えているのです。

宇宙のすべての物質は振動し、生き物は感知する】

恐怖を引き起こす警告のシグナルだとか、音楽の高揚感だとか、すべては私たちが呼吸する絶え間なく揺れ動く空気によって管理されたり、緩和されたりしています。

そして、宇宙のすべての物質やエネルギーが振動しているという事実は、それをさらに深遠なものにしています。

生きるため、進化するため、成長するためには、絶え間ない揺れを情報に変換して処理する手段が必要です。そして、すべての生命体が環境に適した何らかの方法で振動を検知しています。

人間や鳥など空気を吸うすべての哺乳類は、羽毛よりも軽いストロークの空気のパターンを受信し統合するため、絶妙な感度を持ったシステムを進化させました。

もし人間が感知できる音がこれ以上小さいものだったら、おそらく一生の間、空気分子のブラウン運動(液体や気体中に浮遊する微粒子が、不規則に運動する現象)に絶えず気を取られてしまうことでしょう。それでは生きていけません。

量子物理学の神秘にあっては、物質とエネルギー、つまり粒子と波という波状をした雲の中で、すべてのものが振動しています。

私たちの身体も音を出しているに違いなく、実際に何兆個もの生体細胞が、GHz帯の周波数で共振しています。血液中の鉄分子のように、1秒間に10兆回も振動している原子もあって、身体もまた宇宙に向かってハミングする多数の細胞の声で構成されているように思えるのです。

【私たちは音によってつながっている】

そう、私たちは本当に音でできているのです。

静かな部屋でのささやき声、クリック音や咳、屋上でのパーティーの歓声など、ごくごくわずかな音を鼓膜を伝って辿っていくと、私たちの存在が無限に、逃れようがないほどにつながっていることを、より理解できるのではないでしょうか。

空気中のウイルスを心配して口元にマスクが必要な時代になっても、音のパターンは同じように連鎖的に伝わってきます。

しかし、ウイルスが便乗するエアロゾルが広がるのとは違って、まるでリレー選手たちが10億本のバトンを次々に手渡すように空気が揺れ動き皮膚に触れ、メッセージを伝えるのです。

人間の場合、そこには思考も関わっていて、マスクをしている人の声はもちろん小さく聞こえますが、誰かの頭の中にある考えが、聞いている別の人の頭の中に届けられるという奇跡が起こります。

そして、大海原に打ち寄せる大きな波の上にたくさんの小さな波が乗っているように、すべての根底にはリズムがあります。

【音のリズムの宇宙のなかで生まれ、生きている】

リズムの認識は胎児期に胎内で始まります。

母親の声や歌、テレビコマーシャルや料理の音などが認識され、個人が振動に浸されるということが、生まれる前から恒常的に行われています。死後ですら、残されたホコリの分子は振動し続けています。原子レベルで振動していないもの、音が鳴らないものはなく、究極の静寂はないのです。

信じられないほど大きく遅い重力波(最近、アインシュタインの予言を検証するために観測された)から、とんでもなく速いセシウム原子まで、すべては銀河系の中のサウンドパーティです。"the rhythm is gonna get you."と歌うグロリア・エステファンの歌詞そのものですが、既に誰もがリズムに捉えられています。

ぜひ次回パーティーを開催する時には、大音量で音楽を楽しみ、バイクに乗り、電動工具を用いて、音と聴覚の奇跡に敬意を表してみてはいかがでしょうか。(同時に自分の耳を守りましょう。)

古代の賢者と、最近の物理学者たちの言うことは一致していて、私たちは音を経験するだけではなく、そのための素晴らしい器官を持っているのです。そして、誰もが音でできています。

以上、音の神秘に改めて触れることで、聴覚に敬意を表し聞くことを楽しんで、それはきっと耳を大切にする心にもつながることでしょう。

それではまた!

H. クリストファー・シュバイツァー博士は、Hear4-U Internationalのディレクターであり、 聴覚の研究、教育、臨床聴覚学の分野で数十年のキャリアを持つ。 現在は、聴覚産業のコンサルティングを行っている。連絡先 helpuhear@gmail.com


参考資料

*Horowitz, Seth S., The Universal Sense:How hearing shapes the mind. New York. Bloomsbury USA 2012.
**Schweitzer, H. Christopher, ‘First there was Rhythm’. Hearing Views and Hearing Health & Technology Matters.   http://hearinghealthmatters.org/hearingviews/2013/first-rhythm/  2013.
***Watts, Alan, The Book: On the Taboo against knowing who you are. New York. Vintage Books edition (1989) Random House 1966.

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